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2007年9月26日
イレブンストーリーズ・Ⅰハルの事
それはそれは青い空で。
先週造ったばかりの、手作りテラスはペンキの斑があちこちにあり
私はそれすら愛おしいと思っていたのに。
ついさっきまでは。
濡れた洗濯物をテラスに運び、肩越しには窓を隔てた小さな世界があって。
私の最愛という生きた宝が弾のようにはねては転がって。
それはこの上なく幸福の象徴だと思っていたのに。
ついさっきまでは。
本当にたった一瞬前までは、私の全てが満たされていると感じていたのだ。
見上げたら青い空。
吸い込まれる様に私の思考は宙をひらひらと、しかし急速に。
空へ空へと飛び立っていって・・・。
そして、不安。
昇っていった思考は糸のように細く、細く。
まるで蜘蛛の糸のようにきらきらと儚いもので、それをなんだか捕らえるのも難しいというのに、
一度その限りなく藍い青の空間に消えたと思った思考は、姿を変えて戻ってきた。
まるで巨大な隕石が私にだけ向って落ちてくるように。
まるでブラックホールが徐々に近づいてくるように。
まるで、まるで・・・竜巻のように勢いよく、しかし徐々に。
私に降りかかり、辺りは私にだけ暗黒を招く。
洗濯物がひらひらと風に揺れる午後。
冬の終わりを完璧に告げて、日差しはやさしく暖かい。
時折吹く風は冬の名残を残す冷たさで、私の頬を撫でた。
振り返ると子供が二人。
何度張り替えても無残に破かれる網戸を揺らして、その体から発するとは思えない声を上げ
人間ではない何かに変身して動き回っている。
愛おしいと思っていたペンキの斑がたまらなく気になりだす。
だめだ。
さっきまで全てが幸福の象徴だったというのに!
天使の声がビルを破壊するほどの騒音に変わる。
だめだ。だめだ。だめだ。
気がつけばひとつの斑を、洗ったばかりのタオルで擦りだす私がいる。
わかってる。わかってる。
今私がしている行動を私は理解している、なのに止められない。
音はどんどん大きくなり、私の胸の中からもしてくる音と重なる。
どんどん・・どん・・どん・・ どんどんどん!!
だめだ、だめだ。止まれ!
動悸は激しくなり、わかってる、この後の結果を私は知っている。
「やめてええええっ!!!静かにしてっ」
ほらね。
そして、沈黙。
今の私がどうなっているかも知っている。
きっと、泣く気もないのに涙が止まらなくなってて、体中がブルブルと震えている。
わかっているけど、わかっているのに。
まったく感覚がない。
私じゃない。
私じゃない。
私は、幸せな私はこうじゃない。
こうじゃない。
誰か。誰か。誰か。。。。
手垢だらけのくすんだガラス窓の向こう側に見える小さな二つの顔。
釣りあがった私の眼を恐れ、哀れみ、そして呆然と見つめている。
誰か。誰か。誰か。。。。
私を助けて。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
長い沈黙が私を襲い、落ちるとも昇るともわからないこの心の空間が堪らなく不安。
次には息ができなくなって、もっとすごい恐怖が襲ってくるのがわかる。
それはどんどん近づいてきているのだ。
そうだ。
こんなときは彼女に電話しなきゃ。
そうだ。そうだ。思い出した。
電話。
見えない糸が私と彼女をつなぐ。
それはきらきらとして、まるで蜘蛛の糸のように。
その前に薬を飲んで。
そして、あれもやらなくちゃ。
それはそれは青い空。
限りなく藍い青、私の眼には紅。
その糸はきらきらとふわり飛び立って、私は私というものから解放されるのだ。
投稿者 さゆりん : 2007年9月26日 01:59
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